最高裁判所第一小法廷 平成8年(オ)983号 判決 1998年3月26日
上告人
株式会社アイチ
右代表者代表取締役
森下安道
右訴訟代理人弁護士
野島潤一
被上告人
株式会社三和銀行
右代表者代表取締役
枝実
右訴訟代理人弁護士
小沢征行
秋山泰夫
香月裕爾
香川明久
露木琢磨
吉岡浩一
宮本正行
北村康央
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人野島潤一の上告理由について
配当期日において配当異議の申出をしなかった一般債権者は、配当を受けた他の債権者に対して、その者が配当を受けたことによって自己が配当を受けることができなかった額に相当する金員について不当利得返還請求をすることができないものと解するのが相当である。けだし、ある者が不当利得返還請求権を有するというためにはその者に民法七〇三条にいう損失が生じたことが必要であるが、一般債権者は、債務者の一般財産から債権の満足を受けることができる地位を有するにとどまり、特定の執行の目的物について優先弁済を受けるべき実体的権利を有するものではなく、他の債権者が配当を受けたために自己が配当を受けることができなかったというだけでは右の損失が生じたということができないからである。
以上と同旨の原審の判断は正当として是認することができ、論旨は採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官大出峻郎 裁判官小野幹雄 裁判官遠藤光男 裁判官井嶋一友 裁判官藤井正雄)